仁三郎さんのそばはうまいぞ

山形は次年子(じねんご)の蕎麦屋。
モリシマ氏に教えてもらってしたためていたんだが、山形方面に行ったので遂に襲撃に成功。

「予約の店」とかいうので、予約に合わせて打ってくれる拘りの店なのかいなと思って朝予約。メニューがわからんので、「4人でおそば食べに行きたい」とだけ伝えておいた。

行って吃驚。メニューはない。

「腹一ぱい一、〇〇〇円」

という紙しか貼ってない。
とんでもなく寂れた山の中で、県道からもだいぶ奥まった所にあるのに、県外ナンバーの車が沢山路駐してあって、店の中は大繁盛。おそるべし仁三郎。

きくらげの刺身?と枝豆(茶豆みたいな濃いやつだ)と、蕨だろうか?が山と積んであって勝手に喰ってよい卓に適当に座らされて、注文もとらずにどんぶりに入った蕎麦が出てくる。もちろん冷たくて、つゆに付けて喰うやつだ。

店の姉ちゃんのボケっぷりが良い。
どんぶりの蕎麦を沢山盆に載せてうろうろしているので、お代わりする時はそこから好きなだけ取ればいいのだ。姉ちゃんは蕎麦の減った卓に赴いては「おかわりどうですかー」と薦める。

いや、もう腹一杯。蕎麦湯くだせい。「はい蕎麦湯ですね」と言ったものの、しばらくするとまた「お代わりどうですカー」と廻ってくる。おーい。

水も最初から出したり、頼まないと持ってこなかったり。でもその水、冷たくないのに美味しかった。すごい。

仁三郎その人のボケっぷりがさらに良い。
客と同化して座り込んでクダまいていて、一向に仕事しない。せいぜいお勘定だけかな。

「はい、6人ならー6千円。え?幼稚園?幼稚園はー、タダ!」

「ワンカップはー300円。二つならー、600円!」

始終こんな調子。明朗会計ってやつだ。(?)

予約は何で必要なんだろう?おばちゃんは客の入り具合に関わらずひたすら蕎麦打ってるし、客は入れ替わり立ち代わりひっきりなし。
座席の都合だけなのかな?それも怪しい。

肝心の蕎麦だが、うまいよこれ。味とか蕎麦粉っぽさとか、これに匹敵する蕎麦はまあ他でも喰えるんだけど、喉ごしって言うのかね。表面のツルツルさが絶品。これをしこたま喰って千円はすごいよ。

次年子のこの一帯、蕎麦屋らしいところはたくさんある。むしろ蕎麦屋しかない。どこもそれなりに旨いに違いない。

ITOH Osamu/ Sachi/ Guest Book/ 036@itoh.gentei.org