何でも喰ってやろう

マーケットに行くと、耕作組合の部長が、

「いとーくんも食わんね?」

と、何ぞ差し出す。こういうのは良くあることなんだけど、なんか今日のは雰囲気が違うぞ。
佃煮のように見えるけど、何すかこれ?

熊ん蜂

うをー来たー、ゲテモノ。
しかしここでたじろいでは男が廃る。左手を差し出す。
器に入っているのは全体的に茶色っぽく見えるが、手に乗せられたのは黒いのばっかり。

黒いのは成虫

うへえー、そのまんまの形じゃねーかよー。でも海老や蟹だって丸ごとボリボリ喰うのに蜂だからって大差ないよな。おんなじ節足動物だし。佃煮じゃあ味もよくわからなそうだし。

「噛まない方がいいかもよ」

追い討ちかけられた、もしかして不味いんすかー?
しかもまだ手に乗せてくる。もう山になってまんがなー。

「いつまでも手ー出してるから・・・」

ひー、あんたら節度ってもんが無いんですかい!
意を決して、でかいのひとつつまんで喰う。
平静を装ってるけど、指先に力が入らない。ううー、わしもこの程度かのう。

ぷちっ、じゅるっ、ボリボリ。

思い切り噛み砕いてやった。中から甘い汁が飛び出し口に広がる。
んー、味は、まあ甘い佃煮ですなあ。

とは分かっても、なかなか自然には喰えませんなあ。どきどき。

まだ終わらない。

「ほら、そんな喰い方してないで」

うをー、おっさん掌の一山をぼりっと食いやがった!
うーむなるほど、そっちの世界でもネタ系じゃなくて実際に普通に喰うもんなわけね。
そういうことなら、いきましょ。ぼりっ。

「口直しやるよ」

はぁ、ありがとごぜます。そんな口直しするほど癖もありませんけど?
左手を差し出すと、

もう一山くれやがった。(;_;)

うー、ぼりぼりぼりぼり。

五分後、体中が熱くなって、やり場の無い元気に悶えた。
おめーら日常的にこんなもん喰って、何してるんだー?!

ITOH Osamu/ Sachi/ Guest Book/ 036@itoh.gentei.org